記事公開日
IL/RL測定で測定値がばらつく原因と対策

光測定における「測定値のばらつき」とは
光コネクタ製品の製造現場において、IL測定やRL測定の数値がばらつき、再現性が悪くて困った経験はないでしょうか?
同一の測定器を使用しているにもかかわらず測定値がばらつく場合、単に測定器の不具合が原因とは限りません。実際には、コネクタ端面の付着物、接続状態の違い、ファイバへの物理的ストレス、作業手順の差など、測定環境や運用条件によって発生するケースも多く見られます。特にRL測定では、端面状態や接続条件のわずかな変化の影響を受けやすい傾向にあります。
量産現場において測定の再現性が悪化すると、合否判定のばらつき、歩留まりの低下、再測定による確認工数の増加といった悪影響を及ぼします。
本記事では、光コネクタ測定において測定値がばらつく主な要因と、測定の再現性を向上させるために現場で確認すべきチェックポイントを解説します。
測定値がばらつく主な原因
光コネクタ製品のIL・RL測定において、測定値の再現性を低下させる代表的な要因は以下の通りです。
⚠コネクタ端面の汚れ・異物
コネクタ端面に付着した微細なチリや皮脂、エタノールの拭き残しは、光の散乱や吸収を引き起こす最大の要因です。特にRL測定は端面状態の影響を顕著に受けます。
⚠接続状態(嵌合)のばらつき
コネクタをアダプタへ差し込む際の力加減やわずかな傾きによって、接続条件が変化します。また、使用している測定用アダプタの割スリーブが摩耗していると、毎回芯ズレが起こり、値がばらつきます。
⚠ファイバへの物理的ストレス
測定中にファイバが不意に曲がったり、引っ張られたり、ねじれたりすると、漏れ光(マクロベンド損失)が発生してILが悪化します。特にSMファイバや、1550nmなどの長波長帯での測定時に影響が大きく出ます。
⚠作業者による操作の差
清掃の丁寧さ、コネクタの挿抜方法、測定時のケーブルの取り回しなどが作業者ごとに異なると、それがそのまま測定値の差となって現れます。
⚠リファレンス取得時の不備
測定の基準となるマスターコードの端面が劣化・汚れていたり、リファレンス取得時の接続が不安定だったりすると、その後の測定すべてに誤差が引き継がれてしまいます。
⚠測定環境の変化
高精度な光測定では、周囲環境の影響によって測定値が変動する場合があります。急激な温度変化や空調の風、周辺設備からの振動などが接続部や光学部品へ影響し、測定値のばらつきにつながることがあります。

RL測定で再現性が悪化しやすい理由
IL測定と比較すると、RL測定は数値が暴れやすい傾向にあります。
これは、IL測定が「通過していく光の量(損失)」を見るのに対し、RL測定は「接続部や端面から戻ってくる微小な反射光の量」を測定しているためです。非常に微弱な光を捉えるため、端面状態のわずかな変化が、測定値(dB値)に大きな変動として現れます。
特にAPC(斜めPC)コネクタの測定では注意が必要です。APCは端面を傾斜させることで反射光を外へ逃がす構造ですが、測定時にわずかな隙間(ギャップ)が生じたり、調心がズレたりすると、本来逃げるはずの反射光が測定器側に戻ってしまい、RL値が大幅に悪化・変動する原因になります。
そのため、RL測定ではIL測定以上に入念な端面管理と接続の安定化が求められます。
測定値を安定させるためのチェックポイント
測定値にばらつきが発生した場合、すぐに測定器本体の故障を疑うのではなく、まずは接続ケーブルやアダプタ、端面状態、接続条件などを確認します。
一度に複数の条件を変えてしまうと真の原因が特定できなくなるため、一つずつ切り分けながら確認していくことが重要です。
✅端面状態を確認する(端面汚れ対策)
コネクタ端面の汚れや異物は、測定値変動の主要因の一つです。測定前に端面清掃や端面確認を行うことで、再現性改善につながる場合があります。特にRL測定では、端面状態の影響を受けやすいため注意が必要です。
✅接続状態を毎回一定にする(嵌合ばらつき対策)
コネクタの差し込み状態や嵌合状態が毎回異なると、測定再現性へ影響する場合があります。接続時の手順や取り扱いを統一し、コネクタをアダプタに奥までまっすぐ差し込む動作を徹底します。また、測定用アダプタや割スリーブの摩耗についても定期的に確認してください。
✅ケーブルの取り回し・配置を固定する(ファイバストレス対策)
測定中のケーブルに不要なストレスを与えないよう、作業台でのケーブル取り回しをできるだけ一定にして、常に同じ曲げ半径やテンションに保てるように工夫してください。
✅作業手順を統一する(作業者差対策)
清掃方法や接続手順、測定時のケーブル配置などを標準化することで、作業者ごとの測定結果の差を低減できます。特に複数人で測定を行う現場では、作業手順書を整備し、同じ手順で測定を実施することが重要です。
✅リファレンス状態を定期的に確認する(基準値管理)
リファレンス取得前にはマスターコードの端面状態を確認し、マスターコードや測定用アダプタの劣化・摩耗についても定期的に点検してください。
✅測定環境を一定に保つ(環境変動対策)
高精度な光学測定器は環境変化の影響を受ける場合があります。測定中のケーブルや接続部に空調の風が直接当たらないよう配慮し、室温の急激な変化や振動の発生を避けることで、測定の安定化につながります。
安定した測定運用を継続するために
「測定値の再現性」という課題の解決には、日常的な確認の実施だけでなく、継続的に安定した測定運用を行える環境づくりも重要です。
・作業手順の標準化と「見える化」
清掃の回数や方法、接続手順、ケーブル配置、リファレンスを取得する頻度や条件などを写真付きの作業手順書として統一することで、作業者ごとの差を低減しやすくなります。
・マスターコードやアダプタの定期的な寿命管理
測定時のリファレンスとして使用するマスターコードや測定用アダプタは消耗品です。汚れ、摩耗、劣化などによって、測定値が変動する場合があります。定期的な交換のルールを設けて管理することで、安定した測定運用につながります。
・不具合発生時の再現条件の記録
測定値のばらつきが発生した際の条件や傾向を掴むために、発生時の使用ケーブルや測定条件などを記録・蓄積しておくことで、原因特定につながる場合があります。
・PC制御化/自動化の検討
測定条件の統一やデータ管理の観点から、PC制御による運用改善が有効となるケースもあります。測定条件や保存形式を一定化しやすくなるため、人による操作差の低減につながります。



