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なぜ隣の測定器と値が違うのか?光測定器のトレーサビリティと校正をわかりやすく解説

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なぜ隣の測定器と値が違うのか?

「同じ場所を測っているのに、昨日と数値が違う……」
「隣の部署の測定器で測ったら、結果が変わってしまった」
光測定の現場では、このような経験は決して珍しくありません。しかし実際には、測定値が完全に一致しないこと自体は、ある意味では自然なことです。どれほど高性能な機器であっても、わずかなズレは避けられません。
そのため重要なのは「値が違うこと」ではなく「なぜその値になったのか」を説明できることです。

求められているのは「値の保証」

測定現場で本当に求められているのは「その測定値が正しいと裏付ける根拠」です。
例えば「この測定器で測定しました」と説明するだけでは、第三者はその値を信頼できません。「どの基準で校正されているのか、どの程度の精度があり、不確かさはどれくらいなのか」これらを説明できて初めて、その測定値は第三者にも信頼されるデータになります。
根拠が曖昧なままでは、同じ製品でも担当者や拠点によって判断が変わり、品質基準が安定しません。

トレーサビリティは「測定器の家系図」

測定値の根拠を支えているのが、トレーサビリティです。
トレーサビリティ(Traceability)とは、測定結果が国家標準まで途切れることなくつながっている状態を指します。難しく聞こえるかもしれませんが、イメージとしては「測定器の家系図」です。
例えば、現場で使用している光パワーメータは、定期的に校正機関で校正されます。校正機関は、さらに高精度な基準器を用いて校正を行っています。そして、その基準器は最終的に国家標準へとつながっています。
つまり、測定の基準は次のように受け継がれています。

〇国の基準

〇校正機関の基準器

〇会社の標準器

〇現場の測定器

という流れで、測定の基準が受け継がれています。
家系図で例えると、

〇ひいおじいちゃん

〇おじいちゃん

〇親

〇子ども

という関係に近いイメージです。現場で使用している測定器が信頼される理由は、この家系図をたどると国家標準までつながるためです。
日本では、産業技術総合研究所(AIST)計量標準総合センター(NMIJ)が国家計量標準を維持しています。アメリカでは、アメリカ国立標準技術研究所(NIST)が同じ役割を担っています。
また、日本品質保証機構(JQA)をはじめとするJCSS登録校正事業者は、国家標準につながる基準器を用いて企業の測定器を校正しています。
このようなつながりがあることで、測定値は単なる数字ではなく「国家標準につながる基準に基づいたデータ」として第三者へ説明できるようになります。
 

解説
AIST:Advanced Industrial Science and Technology
[国立研究開発法人 産業技術総合研究所]日本の公的研究機関。国家計量標準の維持・研究を行っています。
NMIJ:National Metrology Institute of Japan
[計量標準総合センター]AIST内に設置された日本の国家計量標準機関。長さ・光・電気・温度などの国家計量標準を維持・管理しています。
NIST:National Institute of Standards and Technology
[米国国立標準技術研究所]米国の国家計量標準機関。日本のNMIJに相当する役割を担っています。
JQA:Japan Quality Assurance Organization
[一般財団法人日本品質保証機構]校正・試験・認証などを行う第三者機関。JCSS登録に基づく校正サービスも提供しています。
JCSS:Japan Calibration Service System
[計量法校正事業者登録制度]計量法に基づく登録制度。国家計量標準につながる校正能力を備えた校正事業者を登録する制度です。

「不確かさ」を知ると測定値の見え方が変わる

トレーサビリティが確保されていても、すべての測定器が同じ値を示すわけではありません。どれほど高性能な測定器でも、測定値にはわずかなズレが存在します。
例えば、
測定値:-10.0 dBm
不確かさ:±0.2 dB
であれば「真の値は-10.0 dBm付近にあり、±0.2dBの範囲で存在すると合理的に考えられる」という意味になります。
重要なのは、ズレをゼロにすることではありません。どの程度のズレが見込まれるのかを把握し、根拠を持って説明できることです。その情報があれば、測定値の差が許容範囲なのか、それとも異常なのかを客観的に判断しやすくなります。

校正証明書は測定値の根拠を示す資料

測定器がどの基準につながり、どの程度の不確かさを持っているかを確認できる資料が、校正証明書です。
校正証明書には、トレーサビリティの経路や校正条件、不確かさなどが記載されています。そのため、校正証明書は単に「校正済み」であることを示す書類でなはく、測定値に違いが生じた際に「なぜこの値を信頼できるのか」を証明するための根拠資料として活用できます。

ズレを説明できる状態にする

測定において重要なことは「どの基準につながっているのか、どの程度のズレが見込まれるのか、その内容を第三者へ説明できるか」この3つを把握しておくことです。
トレーサビリティは、測定データの信頼性を客観的に示すための仕組みです。測定値に違和感を感じたときは「どちらが正しいか」ではなく「何を根拠に説明できるか」という視点で見直してみてください。
その視点を持つことで、測定値の見方が変わり、データの信頼性への理解も深まります。

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